横浜らしい年末の音「除夜の汽笛」ってなに?
12月の最終日である「大晦日」は1年を振り返りながら、お正月に向けて準備する日です。
日本では、古来より「年越しそば」を食べて「除夜の鐘」を聞く風習があります。
ここでは、大晦日の横浜で聞こえる「除夜の汽笛」を紹介するコンテンツです。
横浜らしい年末の音「除夜の汽笛」ってなに?
みなさんは、大晦日の年越しをどのように過ごしますか?
- テレビ番組を観る
- 年越しそばを食べる
- カウントダウンをする など…
1年の終わりを過ごすのに、さまざまな楽しみ方があります。
そんな中、横浜の年越しといえば「除夜の汽笛」です。
横浜ならではのイベントで、ハマっ子なら必ず一度は聞いたことがあると思います。
「除夜の汽笛ってなに?」「はじまったきっかけは?」「どこで聞こえるの?」
このような疑問は、ハマっ子でも意外と知らないのです。
今回は、大みそかに横浜港から聞こえてくる「除夜の汽笛」に関する内容をお伝えします。
大晦日に横浜で聞こえる「除夜の汽笛」とは?
「除夜の汽笛」とは、新年を迎えた瞬間に横浜港の船が一斉に汽笛を鳴らすイベントです。
そのため、中区の大さん橋広場に「除夜の汽笛」を聞くため、多くの人が集まります。
横浜港に停泊する船が一斉に汽笛を鳴らす雰囲気は、幻想的かつ圧巻です。
「日本郵船氷川丸」や「飛鳥Ⅱ」など、世界的な豪華クルーズ船の汽笛も聞けます。
ここ数年は、新年のカウントダウンを船上で楽しむのが人気となっています。
「遊覧船」「レストラン船」「クルーズ船」などのさまざまな種類があり、楽しいですよ。
また、出入国ロビーも開放されるため、クルーズ船で映画鑑賞もできます。
そもそも、大型船の汽笛を間近で聞くことは滅多にできません。
このように、普段は味わえない体験ができるのも元旦の横浜港ならではですね。
大晦日の恒例行事「除夜の鐘」ならぬ「除夜の汽笛」といったところでしょうか。
そして「除夜の汽笛」が終了したあとは、大さん橋の屋上へ向かいます。
横浜ベイブリッジの右側から昇る「初日の出」を拝むことができるのです。
寒空の下、澄んだ空気の中で徐々に昇ってくる初日の出は絶景となっています。
初日の出からもらえるエネルギーで、1年のご利益をたっぷりいただけそうですね。
ただ、大さん橋でのベストポジションを狙うなら、遅くても6時には待機していましょう。
なお、大さん橋付近は海風でとても寒いため、防寒対策をバッチリ行ってくださいね。
「除夜の汽笛」が始まったきっかけと歴史について
江戸時代、日本で初めて開国したのが「横浜」です。
そして「除夜の汽笛」が始まったのは、明治時代と言われています。
詳しい歴史は不明ですが、この「除夜の汽笛」は500年以上前のヨーロッパが起源です。
当時、大航海時代であったヨーロッパに現在のような時計は普及していません。
そのため、人々は日の傾き「日時計」などで大体の生活をしていたのです。
船上では、時刻を知らせる手段として「30分に1回ベルを鳴らす」合図がありました。
「大洋丸」のタイムベル
かつて船では、30分ごとに時刻を知らせるタイムベル(時鐘)を鳴らしていました。鐘が1つで1点鐘と言い、0時30分は1点鐘、1時は2点鐘と続き4時の8点鐘で一巡です。
それを6回繰り返すと24時間になります。
航跡 – 日本郵船歴史博物館
英語では「Ship’s bell(シップベル)」や「Time bell(タイムベル)」と訳されます。
現在で言うところの「時報」といったところでしょうか。
大晦日は、当番の船乗りが景気付けの意味を込めて普段よりも多く鐘を付いていました。
通常8回のところ、倍の16回も鐘を鳴らしていたそうです。
そして、合図の鐘は時代とともに蒸気船に変化したことで、汽笛に変化していきました。
明治時代から続くヨーロッパの習慣は、現在も毎年のように続いているのです。
1996年には「除夜の汽笛」が「残したい”日本の音風景100選”」に認定されました。
新年の始まりと同時に、世界に向かって一斉に鳴らされる汽笛。小さな遊覧船から大きな豪華客船まで、異なる音色によるハーモニーが奏でられ、新年を迎える。「みなとヨコハマ」の代表的な音風景。
残したい日本の音風景100選 – 環境省
環境省(旧:環境庁)が日本の「その土地の風景とともにある音」を選んだものです。
テーマは「耳を澄ませば聞こえてくる、耳を閉じれば聞こえてくる―」となっています。
「横浜港新年を迎える船の汽笛」として認定され、氷川丸が代表して表彰を受けました。
相鉄で巡る年末年始イベント!大晦日は横浜の汽笛がおすすめです – 横浜で暮らそう
「除夜の汽笛」はどこまで聞こえる?
ここからは「除夜の汽笛」を聞くことができるエリアについてお伝えします。
実際に聞くとなると、どのエリアまでなら聞こえるのでしょうか。
そもそも、船舶には汽笛を鳴らす際に出せる音量の規定があるのです。
国土交通省が定めている「海上衝突予防法施行規則(第18条)」では、以下の通りです。
第三章 音響信号及び発光信号
(汽笛の技術基準等)第十八条 法第三十三条の規定により船舶が備えるべき汽笛(以下「汽笛」という。)の音の基本周波数及び音圧は、次の表の上欄に掲げる船舶の区分に応じ、それぞれ同表の中欄及び下欄に掲げる基準に適合するものでなければならない。
「海上衝突予防法施行規則」- e-Gov法令検索
船舶 | 基本周波数 | 音圧 |
長さ200m以上 | 70ヘルツ以上200ヘルツ以下 | 143デシベル以上 |
長さ75m以上200m未満 | 130ヘルツ以上350ヘルツ以下 | 138デシベル以上 |
長さ20m以上75m未満 | 250ヘルツ以上700ヘルツ以下 | 130デシベル以上 |
長さ20m未満 | 250ヘルツ以上700ヘルツ以下 | 120デシベル以上(180ヘルツ以上450ヘルツ以下) 105デシベル以上(450ヘルツ以上800ヘルツ以下) 101デシベル以上(800ヘルツ以上2100ヘルツ以下) |
備考音圧は、汽笛の音の最も強い方向であつて汽笛からの距離が一メートルである位置において、百八十ヘルツ以上七百ヘルツ以下の範囲内に中心周波数を有する三分の一オクターブバンドのうちのいずれか一により測定したものとする。ただし、長さ二十メートル未満の船舶にあつては、表中括弧内に定める周波数の範囲内に中心周波数を有する三分の一オクターブバンドのうちいずれか一により測定したものとする。
2 指向性を有する汽笛は、水平方向において、前項の音圧の測定に用いた三分の一オクターブバンドと同一のものにより測定した結果、次の各号に定める音圧以上の音圧を有するものでなければならない。
一 音の最も強い方向(以下「最強方向」という。)から左右にそれぞれ四十五度の範囲において、最強方向の音圧から四デシベルを減じた音圧
「海上衝突予防法施行規則」- e-Gov法令検索
二 前号の範囲以外の範囲において、最強方向の音圧から十デシベルを減じた音圧
船の大きさによって汽笛が出せる音量は決められているのです。
ただ「除夜の汽笛」で大さん橋に停泊する船舶は「長さ200m以上」に当てはまります。
ここからは、データから最大音圧である「143デシベル」の汽笛が鳴っていることを想定してお伝えします。
一般的に生活音の騒音レベル別に表す際、一番うるさいのが「飛行機のエンジン音」です。
機体の大きさでも異なりますが、デシベル数としては約「120デシベル」となっています。
参考:「騒音の大きさの目安」- 深谷市
飛行機の場合、エンジン音の聞こえる限界距離は「15~20km」と言われています。
一方で船舶の汽笛になると、どのくらいの距離まで聞こえるのでしょうか。
汽笛音が私たちの耳に届くまでには、条件や環境にも左右されるのです。
- 地表近くの気温と上空の気温差
- 湿度と風向き
- 地形や建物などによる障害物
また、聴力は加齢とともに衰えるため、聞く側の耳の状態も影響してきます。
一方で、季節や時間帯の条件は「昼よりも夜」「夏よりも冬」の方が聞こえやすいのです。
そのため、大晦日は「除夜の汽笛」を聞くための条件に適していました。
以上、これらのデータや条件から「除夜の汽笛」の音が聞こえる範囲は「半径10km前後」ということになります。
それでは、この「半径10km」が横浜市内でいうと、どのあたりまでを指すのでしょうか。
横浜市内「半径10km」エリア | 地区名 |
北部 | 綱島/大倉山/新横浜 など… |
南部 | 東戸塚/港南台/六ツ川/能見台 など… |
東部 | 生麦/鶴見市場/東神奈川 など… |
西部 | 鴨居/二俣川/鶴ヶ峰 など… |
このようなことから、横浜市内で「除夜の汽笛」が聞こえるのは、以下の区です。
聞き取りやすさ | 横浜市内のエリア |
聞こえる | 鶴見区/神奈川区/西区/中区 保土ケ谷区/南区/港南区/磯子区 |
一部地域で聞こえる | 港北区/都筑区/緑区/旭区/泉区 戸塚区/栄区/金沢区 |
ほとんど聞こえない | 青葉区/瀬谷区 |
今回、記載している情報は地図上のデータや実際に住んでいる方から聞いたものです。
「一部地域で聞こえる」と記載したエリアも、横浜港に近いほど聞きやすくなります。
「ほとんど聞こえない」エリアも高台など、条件によって「聞こえる」場合があるのです。
あくまで、参考程度としてご活用いただければと思います。
普段は気にしていなかった方も、家から聞こえるのかぜひとも確認してみてくださいね。
「除夜の汽笛」が聞こえる時間帯は、23時45分~24時15分となっています。
横浜で年越しする方は、汽笛が聞こえてから「年越しそば」を食べてみるのもいいですね。
大晦日から元日を迎える際の30分は体感があっという間です。
ただ、大晦日の恒例行事である「除夜の鐘」も、地域住民からの苦情が相次いでいます。
そのため、中止せざるを得ないお寺が増えているのが現状です。
「除夜の鐘」という日本の伝統的な恒例行事が薄れつつあるのは、少し残念ですね。
横浜で大みそかを過ごすなら「除夜の汽笛」を聞こう!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで、大みそかに横浜で聞こえる年末の音「除夜の汽笛」についてお伝えしました。
横浜港の開港とともに、明治時代から続く歴史ある「除夜の汽笛」。
映画鑑賞や初日の出など「除夜の汽笛」以外にもイベントが盛りだくさんとなっています。
普段とは異なる横浜港で「除夜の汽笛」を聞きながら、新年を迎えるのもアリですね。