金沢八景駅の「かやぶき屋根」徳川家康ゆかりの地
京急線「金沢八景」の駅ホームから見える、謎のかやぶき屋根。
非常に印象的ですが、あれは何なのでしょう。
『金沢八景権現山公園』ーあの「かやぶき屋根」とその裏山一帯の名称です。
金沢八景駅の「かやぶき屋根」徳川家康ゆかりの地
2022年4月にオープンした『金沢八景権現山公園』。
ホームから見える「かやぶき屋根」とその裏山一帯を含む公園です。
建物の壁の部分は白くて新しい施設のように見えますが、実はとても歴史と由緒ある建物です。
今回はそんな「金沢八景権現山公園」についてご紹介します。

あの「かやぶき屋根」の正体
緑豊かな小高い裏山を背に、印象的なかやぶき屋根。
あの「かやぶき屋根」の名称は「旧円通寺客殿(旧木村家住宅主屋)」という建物になります。

東照宮を管理するお寺の客間だった
「かやぶき屋根」の裏には小高い山があります。今は「権現山」と言われています。
江戸時代、この地のお代官様だった八木氏により、権現山の上に「東照宮」が、ふもとにそれを管理する「円通寺」というお寺が建てられました。(当時はお寺の僧侶が神社の管理をしていました)
あの「かやぶき屋根」は、円通寺の客間として建てられたものでした。東照宮に参拝する人々をもてなすための建物だったようです。(現在園内には、東照宮も円通寺もなくなっています)
江戸時代の万治年間(1658~1661)に、金沢の代官である八木次郎右衛門によって、東照宮が創建され、同じころ東照宮を管理する別当寺として円通寺も建てられたと推定されています。その後、江戸時代後期に東照宮を詣でる人をもてなすため、境内に円通寺客殿が建築されました。
旧円通寺客殿(旧木村家住宅主屋)- 金沢八景権現山公園公式サイト|公益財団法人 横浜市緑の協会
さて、東照宮は徳川家康をまつる神社です。
江戸幕府を開いた徳川家康は1616年に亡くなった後、遺言に従い「権現さま」として東照宮にまつられます。
東照宮といえばおなじみの日光(栃木県)が有名ですが、家康の棺が運ばれて最初に作られたのは静岡の久野山(久野東照宮)。
その後幕府の奨励もあり、全国各地に東照宮が作られ、金沢のこの地にも東照宮が作られました。


徳川家康ゆかりの地だった
ちなみに「金沢八景」という地名の由来は、埋め立てが進んだ今はもう見られない絶景です。山と海が織り成す景観が美しい景勝地だったと言われます。
そして家康は生前、ここからの眺めを気に入って何度も訪れていた、とされています。
なんと「家康ゆかりの地」だったのですね。
当時、境内山頂から見た風光明媚な景色を気に入った家康は、この地を何度も訪れました。またこのあたりを海の防衛地として目を付けていたようです。家康の没後、お気に入りだったこの場所に東照宮が創建されたと言われています。
家康×横浜金沢|横浜市金沢区 横浜金沢観光協会
現在は下の写真の通り、建物だらけで海は見えませんが、埋め立てられる前は絶景を楽しめたようですね。
家康もここに立って、金沢の風景を眺めていたのでしょうか…

その後の「かやぶき屋根」

その後、明治維新時の神仏分離令により円通寺は廃寺、東照宮は同じく金沢区内にある瀬戸神社と合祀されました。「かやぶき屋根」は、参拝客をもてなす場という役目を終え、円通寺最後の僧侶であった木村氏の住居として使用されたようです。
その後「旧円通寺客殿(木村家住宅主屋)」として横浜市認定歴史的建造物に認定されるなどして、現在のように一般公開されるに至っています。
その後も木村家に住み継がれ、平成9(1997)年に「旧円通寺客殿(木村家住宅主屋)」として横浜市認定歴史的建造物に認定され、平成28(2016)年に特定景観形成歴史的建造物に指定されました。
旧円通寺客殿(旧木村家住宅主屋)||金沢八景権現山公園公式サイト|公益財団法人 横浜市緑の協会
草創当時より、大きな間取り変更や増築はほとんど行われず、江戸時代の客殿としての造りが保存されている貴重な建物です。平成31(2019)年から復元工事が行われ、令和4(2022)年4月1日に金沢八景権現山公園の開園と同時に、一般公開されました。
入場料はかかる?営業時間や休館日は?
公園内は入場無料。「旧円通寺客殿」のかやぶき屋根の中にも無料で入り、見学することができます。
金沢八景権現山公園
アクセス:京急線「金沢八景」駅から徒歩1分
入場料:無料
開園時間:9:00~17:00
休園日:毎月第4月曜日 ※休日の場合は翌平日 年末年始(12月29日~1月3日)
HP : https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/park/gongenyama/about/outline.php
園内を散策してみよう
現代家屋の感覚と比較すると天井が低くて小ぶりな印象です。
江戸時代の間取りなど、ほぼそのまま復元されたとの事。
そういった事も重要文化財に認定された理由の一つなのでしょうか。






▲かやぶきの外に出て裏山へ。「権現山」には遊歩道で登れます。この階段の上の辺りに東照宮があったようです。



金沢八景駅の「かやぶき屋根」で歴史に触れてみよう
徳川家康ゆかりの地だったなんて、ちょっと意外でした。
開港により大きく繫栄した横浜港近辺は江戸末期は寒村だったようですが、金沢は中世から、鎌倉の外港として栄えていたそうです。
その鎌倉幕府を開き武家政権をつくった源頼朝を、家康は尊敬していたとのこと。
金沢の山で景色を眺めながら、何を思ったのでしょうか。
参考:金沢八景権現山公園(旧円通寺客殿)| 茅葺屋根の日本家屋がシンボルの徳川家康ゆかりの地
金沢八景権現山公園は駅から直ぐ近く。
こじんまりとしていますが、緑に囲まれてリラックスできる空間です。是非一度立ち寄ってみてください。